(校門の前で、愛車のサドルに腰掛けながら、一人時間を過ごし) | |
綾瀬遥香 |
(美人の女子高生と一緒に帰れる幸福を味合わない?代金はコンビニの肉まん一つ、と何とも綾瀬らしい文面で送られた一通のメール。ただし、奢ってもらうことについては然程強い意味を持たないのか、すぐに今なら無料キャンペーン中というただ一言を書いたメールを送り、自身がメールの文面にて指定した校門へと足を向ける。愛車の自転車を駐輪所から押してきたのなら、寒空の下でオフホワイトのマフラーに顔を埋めつつ彼を待つことになるのか―)委員会お疲れ様、善法寺。委員長なんだからこの時期は大変なんじゃない?(と軽い労いの言葉を投げかければ小さな笑みを浮かべ、軽く手をひらりと振った。椅子のように腰掛けていた自転車のサドルから降りれば、前のカゴに乗せられた自分の荷物と彼の荷物とを見比べて)善法寺って家どのあたり?呼び出したのに来てくれたお礼に、送ってあげようか。夜道は危険だしね。特に不運な人間には。(冗談なのかそれとも本気なのか、どっちとも取れるような声音でそう告げたのなら、「鞄乗せる?」と緩く首を傾げてみせて。その荷物がかごに乗らずとも荷台に乗せればその分軽くなることは確かであり、押して歩く程度のことは別段苦痛でもなんでもない。とはいえ、これでは少々男女の立場というものが反対であり、すべては彼の反応次第ではあるのだが、果たして―) |
冬場は辛くない?自転車通学。防寒ちゃんとしないと駄目だからね | |
善法寺伊作 |
(この時期の夜は早い。なのに委員会活動は長引いてしまうのだ。誰かが悲鳴を上げ、助けようと動けば結局全員が巻き込まれる。その掃除に漸く目処がつけば今日は解散しようと号令をかけて。一人残って備品の確認後、保健室の施錠をする善法寺を迎えたのは見送られる同級生とエールを送る後輩達。何かあったのかな、なんて首を傾げれば返ってくる事の次第に、打ち解けたみたいで良かったなんて母親みたいな事を考えて。ふと着信を告げるバイブに気付けば首を傾げつつも開くのか。会計委員長に送ってもらうんだ、なんて先程思ったという事は、つまり会計もこの時間までやっていたという事。受け取ったメールに成る程と零して後輩を見送った。了承のメールを打って、送信を押す直前に来たメールに微笑を零したのは顧問だけが知っているだろうか。下駄箱の時点で白い息に外の寒さを思い知れば、待たせたら悪いなと落とし穴に落ちないように細心の注意を払いながら指定された校門に向かうのか。)ごめんね、寒いのに待ってて貰って…あぁ、もう直ぐ予算会議だもんね。予算案まだ作ってないや…(明日はそれかなぁ、なんて面倒臭い仕事を思い出せば溜息をつくのか。毎度ながらああもばっさり切り捨てられる書類の作成に自分が何時間費やしているのか一度思い知って貰いたい。勿論会計は会計で大変なのだという事は、しょっちゅう運び込まれる中等部の生徒の存在により、全校生徒の知るところであるのだが。文次郎はなんとかならないのかねぇ、なんて小さく零して)家?―は西区の方だけど…駄目でしょ、綾瀬さん女の子なんだから。幾ら僕が不運で綾瀬さんが自転車に乗ってても、冬の夜に一人で帰らせるなんてしないからね(その為に呼ばれたのだとばかり思っていたのだが、彼女の言い方ではどうやら別に目的があったようだ。道々聞けば良いだろう、思考の端にとどめながら、彼女の言葉に甘えてカバンを差し出すのか。ただその代わりにこっちは貰うね、と自転車のハンドルをさっさと握れば)―で、綾瀬さんの家ってどっち?(有限実行、送っていくという言葉通り彼女の事は送り届けるのだろう、にっこりと笑って) |
そっちこそ風邪とか引かないように。私防寒はちゃんとしてるから | |
綾瀬遥香 |
(冬の寒さは何度経験しても慣れることはない。活動が厳しく、大変なことで有名な会計委員会―こうして帰りが遅くなってしまうことはよくある事だが、しかし誰かに一緒に帰らないかと誘いを入れたのは初めてのこと。普段一緒に帰っている後輩らもそれぞれで他に帰る相手がいるのだから、誰か誘えばと言われれば必然的に選択肢が狭まり―しかしその結果、選んだのが彼というのがどうも不思議だ。ただし、スパイの為、弱みを握るための作戦の一つ、と自分に言い聞かせれば、ゆっくりと白い息を吐き出し、こっちへと近づいてくる彼に、ひらりと片手を振るのか。)別に良いの。誘ったのは私だし。…一応忠告しておいてあげるけど、予算案が締切に間に合わなかったら受理されずに終わるから気を付けなさいよ。(溜め息混じりに零される言葉に思わず苦笑を浮かべてしまったのは自分はあくまで作られた書類を査定する立場にあるからだ。とはいえ、頭ごなしに全てを却下するのではなく、一応はそれなりの時間をかけてチェックをしているのだから、査定する立場の負担も中々―などと思いつつも、委員長同様に厳しくチェックを入れる点では綾瀬も似たより寄ったりなのだから、潮江は厳しいから潮江なのよ、とどうにもならないと言わんばかりの言葉を返し)西区か。なら大体の方向は一緒だし…え、いや、そんな気遣ってくれなくていいのに。(家まで送れる―そう続くはずの言葉だったが、まさか此処でこの前見た人の良さを再び感じるとは思っていなかったのか、慌てる素振りを隠そうにも隠しきれないよう。送ってもらえばと言われたものの、送ってほしいじゃなくて一緒に帰ろうという誘いに変えたのは流石にそこまでしてもらっては申し訳ないという罪悪感があってこそで。普段ならば、ハンドルを譲ったりなどしないのだろうが、その時ばかりは驚きからか素直に小さく頷きながら、受け取ったカバンを荷台に乗せ、それを自身の手で支え)西区のもう一つ向こうの区。方角的には一緒だけど、善法寺の家よりも遠いはずだから、その、途中までで良いわよ?来た道戻ることになっちゃう。(いつもの調子で、「じゃあお願い」などと頼めればどれだけ良かったか。一度崩してしまえば中々元には戻れないらしく、申し訳なさを感じながらも、小さく「有難う」と彼に告げれば、自転車を挟んだ彼の隣りの位置を歩きだすはずで) |
僕は去年の秋口に抗体出来てるから。それでも一応気をつけてね? | |
善法寺伊作 |
(吐き出した息は何れも白く、日に日に気温が低下していることを示している。時折吹き付ける風に緩く巻かれたマフラーはふわふわと浮いているが結ぶ気にはなれないのか、ピンク色のそれは視界の端で揺れる度に後ろに戻されて。校門までの僅かと言える距離を歩いただけでかなり体温が奪われた事を実感しつつ、彼女の言うようにコンビニにでも寄るのが賢いと言えるのかもしれないなんて考えて)んん、でもやっぱり外は寒いから、僕はあんまり待たせたくなかったなぁ…あ、うん、それは勿論。保健委員は既に何度も痛い目見てるからね。流石に学習したよ(恐らく世間で言う不測の事態であったり、惨事と呼ばれるものに関しては善法寺は殆ど動じないだろう。つまりそれだけ善法寺―否、保健委員は悲惨な場数だけは踏んでいるという事で。勿論受理されないなんて事も過去を遡ればあったのだから、今後気をつけるようにと毎回数々の不測の事態に関しては申し送りがあったりするのだ。いざとなったらボスをやってしまえと言うのは善法寺の先輩の言葉だったか、今は善法寺がそれを後輩に言う側になっているのだけど―「あまり無理はしないようにね」なんて苦笑するのか)気遣って…というか当然だと思ったんだけど。それにもし何かあってからじゃ遅いでしょ?(大体の方向が同じならば然程手間ではないだろう。善法寺の場合例え間逆といわれても送る気では居るのだが。ぽかんとした様子の彼女に、それを珍しいと思える程度善法寺は面識が出来ていて。続く言葉に、もし彼女の性格が善法寺の認識している限りであれば出る筈の言葉が出ない事に、多少見解を改めつつ)―僕の家の隣にさぁ、凄く大きい犬が居るんだよね。で、その犬なんだけど、僕の事見る度わんわんわんんわん力の限り吼えるの。僕、犬は嫌いじゃないけど毎日毎日そこまで吼えられたら気が滅入るじゃない?(だから良いの、と遠回りに理由をつければ冬って星が綺麗だよねなんて他愛の無い話題を振るのか。生憎星座には詳しく無いのだけど、星に纏わる話や御伽噺の類なら事欠かないから話題には暫く困らないだろう。聞こえた小さな礼には笑って「どういたしまして」、と返そうか) |
とか言って、新種のウィルスにやられたりしないようにね。 | |
綾瀬遥香 |
(一緒に帰ることを念頭に置いているため、防寒具として毎朝愛用している耳当てと手袋は鞄の中にしまい込まれたまま―しかし毎朝、そして帰り道を冷たい風を切って自転車で登校しているのだから寒さには随分と強い体質になってしまった。だから気を遣ってもらう必要などないのだけれど、寒さに慣れたなど言えばそれこそ心配されそうな気がして、それを口にすることはなかったが)大して待ってないけどね。自転車取って来なくちゃいけなかったし。…それは、なんというかお疲れ様。もし何かあったら、考慮するように頼んであげるから…なんだろ、ドンマイ?(彼―否、保険委員の宿命ともいえる不運にかける言葉など見当たらず、保健室でのやり取りと同じように曖昧な慰めの言葉を彼に贈ろうか。保健委員だから不運なのか、不運だから保健委員なのかーなんとも不毛な不運のループに、このところ彼を観察してる身としては頭が痛くなってくるらしく、向けられた言葉に同じように苦笑交じりで「でも愛しい委員長が頑張ってる姿見てるとこっちも頑張りたくなるのよね」なんて、言葉を返すのか)…途中まで一緒に帰れたら、とは思ったけど、送ってもらおうとまでは思ってなかったの。何かあってからじゃ遅いけど、でも善法寺の方が何かありそうだし…(自分の情けなさと、彼に対する申し訳なさに言葉を濁しながら、ゆっくりと足を進めていく。異性であろうが分け隔てなく接するのが普段のスタンスではあるが、しかし接するといっても多少の会話とちょっとしたボディタッチが限度である。送ってもらうというシチュエーションは初めてである以上に、自身の乙女心をくすぐるものがあるらしく、僅かに赤らんだ頬がこの夜の暗さに消えてしまうことを願いつつ―)し、仕方ないな。断るのも悪いから、今日は善法寺に送られてあげる。美人の女の子と一緒に帰ったんだよ、って家族と友達に自慢すれば?(あまりにもこじ付けがましいその理由、でもそれが彼らしくもあって、強張りかけた表情が緩み、いつもの調子を取り戻す。頬の火照りが冷たい空気によって冷めたのなら、ふと頭上を見上げて、でも町中じゃ全然見えないけどね、と振られた言葉に言葉を返すのか。ただ笑みと共に向けられた言葉に、張り詰めていた何かが急に切れたらしく、彼が首に巻くマフラーをぎゅっと引っ張り)…なんか腹立つ。この良い子ちゃんめ!善法寺は色々と足りてない。主に身長とか。(恥ずかしさやら色々な感情に苛まれた複雑な思考回路の中、向けた言動は綾瀬らしくもない酷く珍しい子供っぽいそれであり、しかしそれは彼女なりの照れ隠しの一種なのだろう。首を締めたという自覚程度はあるのか、マフラーを掴んだその手はすぐに放されることにはなるのだが) |
そういうのにかかるのは大きな休み中だからそれも多分平気。 | |
善法寺伊作 |
(防寒具として手袋を好まないのは、保健委員であるからと言う理由と善法寺であるからと言う大きく分けて二つの理由が付随する。徒歩通学であるしポケットに手を突っ込むなりなんなり―勿論そうすれば確実に危険であるから滅多にしないのだが―すれば耐えられない程ではないのだが、自転車通学の彼女ならば手袋は必須だろう。疑問に思いながらも恐らくそこにも自分と同じように理由があるのだろうと考え触れないのだが、寒そうな動作をすればそれとなく聞いてみようと脳の端に留めて)今更だけどさ、綾瀬さんて自転車通学だったんだね。この時期自転車通学って辛くない?朝とか。あはは、ありがとう。じゃあもしかしたらお世話になるかも(風邪を引いて下級生に予算案を組ませた事もあった、そのような事態は二度と起きて欲しくないのだが、それがありえるのが保健委員クオリティである。アンラッキーノットアンハッピー。今日も元気に逞しく生きている彼らであるが、不運ゆえに逞しくなった事は否定できなくて。「文次郎は頑張りすぎだけどね。あれにあわせるとオーバーワークだから適度に息抜きしないと」なんて何時も全力の友人を思い出しつつ、小さく溜息をつく。会計と体育に対して健康診断を定期的に行うべきかと言うのが最近の善法寺の悩みの種であり、実際にやりすぎだと向かった事も何度かある。それでも改善されないのは耐性が出来てしまっている為かはたまた性格か―頭の痛くなる問題であるのだが。)まぁ僕に何も無いとは言い難いけど、そんなの何時だってそうだし。綾瀬さんを送ったからどうこう、って事はないんだもの、一緒ならちゃんと送り届けた方が良いでしょ?僕に対しての何かある、と綾瀬さんに何かある、じゃあ重さが違うもの(大方あると言っても道に迷うとか何かに躓くとか人にぶつかられるとか何時もと大して変わりは無いだろう。彼女の論で行くと逆に此処で帰ったら、と言う考え方だって出来るのだし、そもそも投げ出すようなら最初から言い出しはしないのだから。遠慮程度の否定であれば押し切ってしまえと次々肯定の言葉を連ねるのか)そうそう、此処で断られたら僕がなんか惨めだからね。そうしてくれると嬉しいなぁ。…あー、そう言ったら多分母さんあたりが騒ぐと思うけど。会わせろって(けらりと笑いながら思い出すのは息子よりも娘の方が欲しかったと繰り返す母親のこと。せめてとマフラーやカーディガンやらにピンクを要求する彼女の要望を全て否定はしない善法寺だから、マフラーだって薄いピンクだったりするのだ―本人が無頓着すぎるせいもあるのだが。引っ張られた事により小さく悲鳴を上げながら、しかしふざけているとわかっているから余り強くは言わないのか)だって僕まだ成長期って言う成長期はきてないもの…今だって平均よりちょっと小さい位だし、遺伝子的にもうちょっと伸びる筈だから多分大丈夫!(特に気にしていた訳でもないのだが、身長のように自分では如何しようも無い事を言われれば多少眉尻を下げながら。よく一緒にいるクラスメートの身長が大きすぎるのもあるのだが、平均身長を若干下回る善法寺だから余計小さく見えるのか。対した差は無くても、少なくとも隣にいる彼女より小さいという事は無いだろうけど、やはり小さいと言われればそうなのかもしれない。「他に足りないのって、例えば?」なんてふと気になったことを聞き返してみれば) |
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