。+゚☆゚+ 星 降 る 夜 に +゚☆゚+。

。+゚☆゚+ 夙川希咲 & 斉藤タカ丸 +゚☆゚+。

(街の明るい彩りに向かって、庶民的な理由で歩は進み―)
夙川希咲
夙川希咲
(送って行ってもらえば―、その提案には少しだけ戸惑ってしまった。送って貰うと言っても夙川はバス通学であり、バス停まではどれだけ頑張って歩調を緩めて歩いたとしても徒歩で10分程度しか掛からない距離なのである。トントン拍子に同じ委員会の人達がメールを送るのを尻目に、迷いに迷った末に送信したのは「帰りにドラッグストアに付き合って貰えませんか?」という、色気の全く無い物だった。寧ろこのメールで何故彼が了承してくれたのだろうと迄考えつつ。軽い挨拶や雑談を交わしながら校門を出て暫く経てば、隣を歩く斎藤をちらりと見上げた。夜にも関わらずキラキラと存在を主張するその髪が目を捉えれば、先程までは付き合わせて申し訳ないと思って居たのにも関らず、星にも負けてないなあ…なんて暢気な事が思考を過ったお陰か、先程まで感じていた少しぎこちない緊張も夜に溶けて、ふふ、と思わず笑顔が零れたりすらしたー。そうして歩いて数分、道の先にドラッグストアの看板が見えて来れば改めて眉を下げて、)…でも本当に、今日は突然ごめんね、斉藤くん。あのドラッグストア、安くていいんだけど、トイレットペーパーはお一人様1つまでで。(24時間営業とはいえこの時間になってしまえばもうその安売りのトイペは売り切れているかも知れない。ただ、誘う口実がそれしか思いつかなかった。我ながら苦しいなとは感じては居たが、トイペが欲しいのは本当だったりするから、信憑性は低くは無いだろうと。)
 
トイレットペーパーってお使いか何か?
斉藤タカ丸
斉藤タカ丸
(普段の活動は然程目立たずとも、予算委員会を間近に控えたこの時期なのだから委員会活動に勤しんでいるーかと思いきやそうではないらしく、灯りを灯した室内で彼が相手にするのは委員会の業務ではなく女の子の髪。「何してんだかわかんない。そんなことでいいんかい?」と言われるのは伊達ではないようで、こっそりと委員会を抜け出せば、いつものように自分の腕を磨くために女の子を相手にその髪を弄る。「今日はもう店じまいだよ」なんて完全下校と共に女の子と別れ、委員会の活動に今更のように入ろうとするのだが、使った道具を片づけ、色々と思案するうちに時間は過ぎ、そして手元に届くのは一通のメール。文面を見るなり、何故薬局なのだろう、そして何故自分に宛てられたものなのか、と色々な疑問が頭の中に浮かぶも、深く気にすることはなく了承の返事を送れば、委員会に寄ることもなく校門へと向かっていく。その場所へと着けば「お待たせ」と緩やかに言葉を投げかけた後薬局へと足を動かしだすはずで)別に気にしなくていいよ。ワックスがそろそろ切れそうだから、買いに行くには丁度良い機会だったし。トイレットペーパーと一緒に買ってあげるよ。(告げられた口実に何ら深い疑問を抱くことはなく、いつもの調子で答えれば、寒い夜道を白い息を吐き出しながら進んでいく。そういえば、そろそろゴムやピンもなくなりそうだ、あぁあれもそろそろ買い足さなければ―と彼女の口実など気付かぬままに思案し始めるはずで)
 
うん。お買物は家族で交替制なんだー。今週は私なのー。
夙川希咲
夙川希咲
(送信したメールを同じ委員会の友人に強請られて見せた所、見事に額に軽い手刀を食らった。呆れた様な怒った様な友人の姿に目をパチクリさせていれば、如何やら斉藤君に荷物持ちをさせる心算なのかという旨の怒られ方をしている様だった。自分の事であるのにまるで人事の様に感じてしまいながら、取り合えず次の報告で斉藤君は女の子に人気がありますと言う一文を忘れない事は額の痛みに誓って。そんな遣り取りがあった所為か、待ち合わせから此方何だか不思議な気分になる。担当だからと調査を始めたお陰で全く面識の無かった彼と多少話をする程度迄にはなったけれど、最近改めて良く彼が所謂人気者なんだなーと言う事を再確認させられて居て。唐突な誘いだったにも関わらず嫌な顔一つ自分には見せない辺り、此れが人気の秘訣なんだろうな、なんてのんびりとした事を考えて。)うん、ありがとー。ふふ、毎朝お手入れしてそうだもんねー、斉藤くん。朝とか大変そうだー。(兄がこの髪型しか結えないという理由だけで小さい頃からきゅっきゅと編んでいくこの髪型をしていた夙川。自分で髪を結う様になってからも習慣の様にこの髪型を続けて居る身からすれば、個性的な彼の髪型に掛かる朝の様子は想像する事しか出来ないのだけれど。無駄に明るい店内に足を踏み入れれば、入口付近にトイレットペーバーは無事にまだ積まれていた事に安心し乍ら一つを手に取って。言い付けられて居た物は無事に手に入りそうでほっと安心し、)…そうだ。斉藤くんの放課後、付き合わせちゃったし、何かお礼に買わせて貰いたいんだけれど、何が好きーとか…、あ、あと、何が苦手ーとか、あるかな?(最初はごく自然な気持ちから問いかけたのだけれど、何が好きかと問いた所で「弱点を探る」という名目を思い出せば、不自然で無い程度に後半を付け足して。持ち慣れた仕草で持ち手の細いトイペパックを手に、軽く首を傾げた)
 
へぇ、偉いね。もしかして料理とかも交替制だったりするの?
斉藤タカ丸
斉藤タカ丸
(最近、突然と会話を交わすことになった彼女―然程面識があった訳でもなく、会話を交わした回数自体も僅かなものであったが、元よりどこか人懐っこい斉藤の事である。既に彼女の事は学年が一つ上の友人のように認識していて―人様の頼みごとを断るのはあまり好きじゃないことも相まってか、此処にいることがさも当然のことのように有難うの言葉に緩く笑みを浮かべ)どう致しまして。手入れはしてるけど、でも基本手入れ自体は夜だし、朝はセットがメインかな。慣れたから結構早く出来るから、大変でもなんでもないけどね。(それに好きだし、と言葉を続ければ、鮮やかな金色を持つ自身の髪を軽く摘んでみせた。ワックスで整え、ピンで止めてー毎朝繰り返されるその行動は普段ののんびりとした彼からは想像つかないようなテキパキとしたものであり、化粧に勤しむ女子高生よりは恐らくは大変ではないはずで。彼女の方こそ朝は大変じゃないかと、思うのだが、それを口にするよりも先に足を踏み入れた店内に目を細めれば、今回の目的であるはずのトイレットペーパーを一つ手に取り、彼女にこれでいいのか確認を取ろうと―しようとしたのだが、向けられる問いかけの言葉に、ゆっくりと手をひらりと否定するかのように振って)別に良いよ、これくらい。僕もついでにワックス買っていくし、そんなに気を遣ってもらわなくていいよ。(ただ此処で遠慮して逆にさらに遠慮させてしまうのではないかという不安が胸中を過ぎり、困ったような笑顔を一瞬浮かべれば「じゃあ」とそこで言葉を区切った。手に持っていたトイペパックを彼女に差し出して)ちょっと持っててくれないかな。あと、此処で少し待っててくれると嬉しい。(それだけを言うと足早にワックスや他の髪に使うものが置いてある棚へと向かうのか。目当てであるワックスとピンとゴムを手に取ったのなら、そのまま彼女の元へと戻るはずで、その際彼女へ向ける「お待たせ」の言葉は、彼なりの意図を込めて)
 
わ、正解だよー。斉藤くんのお家は家事はお母さんのお仕事?
夙川希咲
夙川希咲
(知り合ってそう日が経っても居ないのに緊張もせずに話せるのは偏えに彼の性格のお陰か。夙川自身も元々其処まで人見知りする部類では無いと言う理由も在るだろうけれど、取り敢えずは顔見知りに成る第一関門は簡単過ぎる程にクリア出来た事に今更ながら安心して。つらつらと語られる髪に関する事情を、一つ一つ頷きながら消化する。「夜も手入れするんだー。」と彼の髪に対する思いの強さを再認識し乍も、普段の何処かのんびりとした彼しか知らないから勿論朝の彼がテキパキとしている事など想像が付かず。唯、慣れたから素早く出来るの言い分は自分にも当て嵌まる所が在るからか納得したように首肯してみせて―)……そう?うん、斉藤君がそう言ってくれるなら、構わないんだけど…、…と、あ、うん。いいよー。わかったー。(何と無しの提案を軽く断られれば、他意は無いとはいえ軽く申し訳無さが募る。余り押し付けがましくする訳にも行かず、お礼の出来ないもどかしさと探る為だった問いを軽く交わされた二点の意味で遣る瀬無く。戸惑う様な表情は上手く隠せたと思ったのだけれど。差し出されたパックを受け取り、良く分からぬまま待ってと告げられれば素直に其れには頷きを見せ。遠ざかって行く背中を確認したのなら、一度トイペを床へと預けて)…向いてないなぁ…、私。(微かな声で紡ぐのは珍しくも弱気な言葉。隠し事や嘘等は余り好まない性格柄か、別段大きな嘘を付いている訳では無いのにも拘らず彼と話す時は少しだけ心が痛む。弱みを握るという前提で何も考えずに親しく出来るほど単純では無いのに此れが仕事だからと割り切る事も難しく―)…だぃ、……大丈夫だよー。(そんな事を考えていれば唐突に聞こえた声。考え込んで仕舞って居たからか最初に出した声は聞こえ辛い小ささで、慌てて言い直し。蛍光灯の下眩しいまでの金髪を直視できずに、トイペへと視線を落として其れを持ち直し乍)斉藤くんはそれで全部かな?良かったら会計しちゃおー。(店内の客は疎らでレジもそう混んでいない。こういった所に寄った際は必ずと言って良い程食べ物にを確認する夙川にしては珍しく其れを話題にする事をせずに。食べる気分じゃない、なんて夙川を知る者が聞けば何があったと言われかねない様なその言葉は、何故か今の気持にはよく当て嵌まった―)
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