[No.3] (放課後―帰宅する生徒が疎らになってきた時間帯にふらりと、) 名前:斉藤タカ丸
(薬品の整理を頼まれたなど何か月ぶりだろうかーそんなことを思いながらも、片手に持つのは割と近所に位置するホームセンターのロゴが入ったビニール袋で。近くに迫った予算会議の為の点数稼ぎとでも言うのか、いつもならば適当に済ますところをどうも今回ばかりは本格的に整理をするらしく、そのビニール袋の中には掃除で使うような用品の数々だ。所謂パシリに任命され、手渡されるのは買出し用のメモに則って、ホームセンターでの買い物を済ませ、現在はその帰路の途中。化学室を掃除するにしては少々その荷物は少なくも見えるが、しかし限られた予算内で買い込むにはこれで精いっぱいといったところなのだろう。棚に陳列された整髪剤に思わず手を伸ばしカゴに入れそうになったなど、勿論彼だけの秘密ではあるが。未遂で終わったその行為、呑気に片手で持ったビニール袋を揺らしながら、校門を潜り軽い足取りで向かうのは―化学室に他ならないのだけれど。ただそんな中、そういえば買い忘れたものがある、と再び校門から外に出ようとするのなら、その視界が捉えるのは紛れもなく一人の少女の姿で)忘れ物?(―と問いかけてみたのは、恐らく彼の気まぐれ以外の何物でもないのだが)
[No.4] いつもこの時間帯は学校に残ってるの?…怖くない、かな…! 名前:高坂明日菜(顧問の口から告げられたスパイの件について、高坂は少なからず不安を抱いた。第一に自分が騙しと殆ど変わらない様な事が出来るかどうか、第二にそれが上手くいくかどうか―調査相手である彼は今年4年生に編入してき、派手な外見と周囲の女の子に騒がれていることから、同学年の生徒と同じ委員会になった事がある者しか知らない高坂であっても、彼の顔と名前は一致する。そんな彼を自分が調査するなんて恐れ多いにも程があるが、これも全て委員会の為、己は唯、会計委員会の為に働くのみ。どこから来るかは分からない前向き、其れが高坂のやる気を引き出す様で、昇降口を出たならばぐい、と伸びを、家へ帰ったら対策を練ると既に計画済み―何だかんだ言って乗気の様で。口元に小さく笑みを浮かべて、帰路へ着き始めようと―其処へ、不意に背後から問いかける声。周りには人はいない、つまりは自分に言っているものだと確定した上で、只管前を向いたまま話しは始まる、)や、忘れ物はばっちり、だよ。わたし置き勉しない派、だし…!現在はこのまま真っ直ぐ下校中、だよ(てっきり一緒のクラスになった事の無い同級生に話し掛けているつもりだったが、声のする方へ振り向いてみれば、其処には調査相手である斉藤タカ丸の姿があって。驚いたのは当然だが、同時に調査についてやら、対策を練る事やら―余計な事を言わなくて良かったと、安堵。其れよりも、彼の手に持つビニール袋が気になった)…斉藤君は…買出し?何、買ったの?(委員会の買出し、だろう―けれど、彼の所属する火薬委員会は、正直、何か買出しする様な物があるのか分からない。好奇心に勝てず、ビニール袋を指差し、問うてみようか―)
[No.5] 結構ね。ちなみに怖いっていうのは先生?それともお化け? 名前:斉藤タカ丸(そこにいる彼女が年上であることも勿論承知済み。ただそれでも同級生となんら変わらぬ口調で接してしまうのが、斉藤の本来の年齢が彼女と同じものであるからかー否、それ以上に年の差を気にしないという彼の気質が関係しているのかもしれないが。どちらにせよ、いつもと同じように緩い調子で話しかける斉藤に彼女の真意など分かる訳がなく、気が向いたからというただそれだけの理由で会話を続け)なんか帰るには中途半端な時間だから忘れ物かなぁって思っただけだから。なんか下校の邪魔しちゃってごめんね。(ただ彼女の気持ちが今この瞬間に揺れ動いたということに感付ける程度には斉藤は鈍感ではないらしい。しかしそれをわざわざ指摘する気などはなく、自分が声をかけたことが彼女を驚かせてしまったのだろうかと思案し、そんな意味を込めての”ごめんね"の言葉で)僕は買い出し。火薬委員会もちゃんと仕事するんだよ、っていうアピールしなくちゃいけないから、皆で化学室の掃除するんだ。(ほら、と袋の中から取り出してみせるのは先程買い込んだ掃除用品の一つ。わざわざその用途まで言ってのけたのは彼女が会計委員であることを知っての事であり、火薬委員もちゃんと動いているという会計委員会に対する僅かながらのアピール。しかし手に持った掃除用品を袋の中にしまい直せば斉藤が浮かべるのは紛れもなく小さな苦い笑み―)ただ肝心の雑巾買い忘れたから、もう一回行かなきゃならないんだけど。(ただそんな笑みも、えへへといつもの調子で浮かべる緩い笑みでかき消せば、二度手間ってこういうのを言うんだよね、と付け足し)
[No.6] …こ、後者寄りの両者!…先生とお化けは同類…! 名前:高坂明日菜(普段の高坂と言えば、この時間帯には既に帰宅しているか、何処かへふらりと寄り道をしているかの二つに限られる。だが今日は少しでも彼の事を知ろうと友人に聞き込んでいたら、いつの間にかこんな時間になってしまった、というわけだ。ちなみに殆どが雑談であった為、得られた情報は正直、少ない。だからこそ、今から家で対策を練るのだが―まさか調査相手から声を掛けられるだなんて、予想外な展開すぎる。運が良いか悪いか、どちらかと言えば話す機会を貰えたのだから、良いに決まっているけれど。彼に聞きたい事を考えるのも対策を練るの内に入っていたから当然そんなものを考えているわけもなく、いざ考えてみようと思っても、突然ぱっと思いつく程頭の回転が速いわけでも無い。―まあ、今日聞き出さなくてもまた今度聞き出せば良い、と。前向きな考えで全て解決、今日は自然体で、己がスパイという事を悟られなければ良いのだ)今日はちょっと調べ物を、ね。といっても殆ど友達と話し込んでただけなんだけど!…友達と話してるとついつい時間忘れちゃって、(あははと乾いた笑みを浮かべてみて。それは呆れに近いものだったが、)委員会活動、お疲れ、様…!火薬委員の活動とか詳しく知らなかったけど、そうか、火薬委員の活動は化学室の掃除なんだ。…でも委員会活動で掃除、かあ。わたしなら乗気になれないだろうなあ…(掃除は元々、高坂の苦手分野で。所属する会計委員会は予算やら帳簿やらの計算をするのが主であって良かったと、心底から会計委員に所属している事を感謝するのはこれが恐らく初めてだ)…もういっそ、雑巾無しで掃除やっちゃう、とか!そうすれば買いに行く手間が増えない、よ。……箒と塵取りさえあれば何とかなる!(なす事も、発言する事も、高坂は掃除に関して随分と大雑把になるらしくて。親指を立てて満面の笑みを浮かべるあたり、その様子が窺えるだろうか―)
[No.7] えっ同類になっちゃうの?まぁどっちも怖いことに変わりないけど 名前:斉藤タカ丸(彼女がスパイであることを悟る、悟らない以前に斉藤の脳内において「彼女=スパイ」という図式につながるような考えは一切持ち合わせていない。委員長でもなく、まして転校生である自身にスパイがつくなど予想出来るはずもなく―もしれこれで委員長であったとしてもスパイだなんて考えが浮かぶはずなどないに違いない―だからこそなんの不自然さも感じることなく、乾いた笑みに表情を緩ませるばかりで)でもそれ分かるよ。話し込んじゃったり何かに熱中すると周り見えなくなるよね。(同意を示すかのように浮かべられるのはいつも通りの代わりない緩んだ笑み。その笑みもお疲れ様と言われれば、更に和やかなものへと色を変えるに違いないが)別に化学室の掃除だけが仕事なんじゃないんだけどね。薬品の管理とかも一応は僕たちの管轄内。(と言ってみたはいいものの、実際のところ管理とは名ばかりで、さして仕事らしい仕事をしている訳ではない。周囲から何をしているのか分からないと言われるのと同時に所属している彼らも然程自分達の活動を理解している訳ではないのだから―それでも相手は会計委員だから、とそんな理由でそういった言葉は一切口に出さず)箒と塵取りだけじゃ流石に無理なんじゃないかな。ほら、やっぱり拭き掃除って大切だし。ちゃんとしておかないと(予算がもらえない―と続くはずの言葉はそのまま飲み込み、あたかも真面目に活動を行っているかのような口ぶりをを。だから駄目だよ、とへらりと笑いながら言ってみたところで実際の火薬委員会の活動内容を知っているものが見ればその笑みも胡散臭いものにしか見えないのだろうが)