[No.3] (始まったばかりの放課後、しかし珍しくも人気はなく―) 名前:食満留三郎
(他と比べれば忙しい用具委員、しかし何も毎日委員会があるわけではない。だが今は予算会議を控えており、尚且つ誰もがぴりぴりと緊張感を張り詰めている時期だ。例え委員会を開くなどと告げていなくても自然と人は集まってくるもの。それなのに、だ。何故か今日に限って誰も来ない。しかもその理由もわからない。用具委員会室、略して用具室―あくまでこの言い方を食満自身は気に入っていないらしい、勘違いを生むとかなんとか、とのことだ―にてパイプ椅子へと身を預けつつ視線の先は唯一の出入り口である扉だ。見ている、見つめているなんて表現よりも睨んでいるの方が正しい眼差しで。もちろん、後輩には甘い彼のことだ。後輩に対しての怒りはないのだろう、おそらく代わりは自分自身。わずかに不機嫌そうな表情で歯を噛みしめ、)委員会があると言う呼びかけはしてねぇ、後輩への気配りも出来ねぇなんて先輩失格だぜ…。(あくまで責めるのは自分、周りには甘すぎるなどと言われがちだがそれを直す気など食満にはひとかけらもない。間近に控えている予算会議が余計に気持ちをはやらせる。なんだかんだで予算が少しでも多く必要となってくる用具委員、勝つ為には会計委員会に勝たねばならなかった。普段から喧嘩っ早く負けず嫌いな食満としては楽しめる行事のひとつでもあるが、その分疲労感はかなりのもの。とは言え、ラスボスとも言える会計委員長が犬猿の仲と言っても過言ではない同級生ともなればこの勝負、決して負けるわけにはいかないようだ。とりあえずしばらくは誰も来ないであろうことを感じ取れば、ぎしり。小さく、それでも静かなこの空間には大きく響くパイプ椅子の軋みを鳴らして立ち上がるのか。おそらく喉が渇いたのだろう、購買に飲み物を買いに行くのか―)
[No.4] 食満先輩は本当に用具委員室が好きですねー?(笑) 名前:夙川希咲(夙川が調査する相手が食満だと知った時の潮江の反応は如何な物だっただろうか。入門票等の遣り取りを見ていれば分かる程度には不仲な彼ら…気合だけは十分に籠められた事は間違いないだろう。そうは言っても元来のんびりとした気性の夙川、ライバル心を露わに絶対に弱みを握ってやろう―と燃え上る性質では無く、苦手である10kgの算盤を弾かなくても良いと言う面に多大な感謝をしながら今日も先輩であり用具委員長である食満の様子を窺っていた。―そんな彼が用具委員会室に入室してから、暫く経つ。恐らくその後も用具委員がやって来るのだろうと、夙川は用具委員会室の入り口の見える階段で待機していたのだけれど。)……おかしーなー?(時間が経てども用具委員会室に生徒が入っていく様子は無く、話し声等も聞こえない事から恐らく食満は室内で一人のようだった。ふくよかな頬に手を添えて不思議そうに首を傾げれば、意を決して用具委員会室の方へと向かって行く夙川。用具委員会室で一人と言うこの状況が、食満の弱みに繋がる何かなのではないかと考えた為だ。扉の前で深呼吸をすれば、一度心の中で「食満先輩ごめんなさい!」と謝ってから恐る恐る扉に手を掛けた。心臓の音が大きかったからだろうか、食満が室内で立てた椅子が軋む音には全く気付かずに、)
[No.8] まぁな、そうじゃなきゃここの委員長なんかやってらんねぇだろ? 名前:食満留三郎(ぎしり―パイプ椅子を軋ませて腰を上げる。そのまま真っ直ぐに唯一の出入り口でもある用具委員室の扉へと向かうのか。そういえば最近寝てないな、なんて思えばくあっ―と大きな欠伸をひとつ。当然ながら目を閉じるわけで、扉一枚を隔ててそこに居る彼女の存在には気づけなかった。がらり、なんて日常でよく聞く音をたてて扉を開ける。一歩踏み出そう―しかしそれは文字通り目の前にいる彼女の存在によって中途半端に終わるのだった。目を大きく見開けば間近にいる彼女を見つめるのだろう。なんだか見覚えがあるような、なんて考えと共に言葉はぽつりと出ていた、)夙川、か…?(永遠のライバル、なんて古臭い言い方かもしれない。それでもそんなとある同級生が受け持つ委員会に所属する者のことはほとんどを把握しているつもりだ。ましてや彼女ほどおっとりとした女子生徒を見間違えるわけもなく。会計委員の差し金だろうか、なんて考えもしたが直ぐにそれを打ち消す。穏やかそのものである彼女がそういったことをしたとしても直ぐに見破れると思ったからだ。実際、そうであるはずだと言うのに見破れなかった食満は多少ならずかなり抜けているといってもいいだろう。しかしやはり警戒心は覚えるものだ、何故会計委員である彼女がわざわざ用具委員室に来ているかが分からないからだ。あの同級生のことだ、後輩を自分に近付けさせないくらいはしそうなものだが―なんて考えると思わず小さく笑ってしまった。本題に戻ろう―頭を切り替えて彼女に視線を戻そう、として後ずさった。あまりにも彼女との距離が近過ぎたから、だ。わずかに顔を赤めながらも平静を装って、)そ、それで…なんで夙川がこんな所にいるんだ、?(少し言葉が詰まったのは気のせいではないはずだ。顔を少し背けつつ視線はきちんとそちらに向けて問うてみるのか―)
[No.9] あ、それは言い得て妙ですー。委員長って皆そうですよねー。 名前:夙川希咲(半分怯えながら扉に手を掛けた時は、潮江先輩が呼んでいましたとか 用具委員の子が迷っていました とか、何かしらの「言い訳」を考えては居たのだけれど、夙川が扉を引く前に自分が空ける筈だった扉がまるで自動ドアの様に動き始めればビクッと肩を揺らしてその姿勢で固まってしまう。視線を上方へと向ければ、つい先程心の中で謝った相手が此方を見下ろしていた。流石に予想外な出来事に目を見張り、何度も瞬きを繰り返してしまったが、名前を呼ばれれば黒目がちな目を細めて気の抜けた笑みを浮かべ。)…はいー、こんにちは、食満先輩。(へこりと少し頭を下げる挨拶をすれば、後は何も言わずに。何かを考えている様子の相手を、にこにことした笑みの侭見つめる。夙川基準では、現状、内心結構焦っていたりするのだけれど、表面上はそうも見えない辺りがのんびり屋さんだと呼ばれる所以だろうか―。改めて夙川を見下ろした相手に一歩引かれれば、ほんの少しだけ下げた眉で首を傾げるも、この場に居る理由を問われれば一瞬言葉に詰まってしまった。)……あっ、…あ、ええ、と…、(ゆるりと指先を揺らしながら必死に頭を回転させること数秒、夙川は一つの無難な回答を弾き出した。慌ててカーディガンのポケットを探れば、自分のお菓子用にと作って来たクッキーの袋。シンプルな袋に入ったクッキーだったが、今この場を乗り越える為にならば十分だろう。)……これ、昨日作ったんですけれど、よかったら、いかがです、か?、と思って…。(食べるのが好きな夙川、食に関する腕前はそれに伴って十分な実力を兼ね添えている。生憎と元々は自分用のクッキーだったから、味付けは少し甘みが強いかも知れないが、何の用事も無いのに食満の元を訪れていると言う状況よりはずっと合理的だろう。この際受け取って貰えるかどうかは問題では無く、この場に居る事が自然だと思って貰えるかどうかが重要で、)