(――予算会議前の会計委員会は地獄だ。何気なく目をやった後輩の姿を見れば感慨に浸りたくもなる。根を詰め過ぎても良くないと珍しく取り止めになった帳簿計算の続きは思っていた以上に気を楽にしてくれたけれど、それにしたってこの惨状は――今日は働かなくていいなんて考えに至ったのか、取り止めを告げられて直ぐに「寝る!」と宣言した後輩は連日の疲れが溜まっていたのか、何故か会議机の上でコートを被って真っ直ぐにのびて―これも方向音痴の一種なのだろうか―夢の中。そのクラスメイトの後輩も額にくっきりと鉛筆の跡を残しているし、言い争いが絶えなかった筈の一年生は奇妙な連帯感で仲良く騒ぎ出している――彼自身も、体が疲れを訴えている事は理解していた。先輩達も大袈裟に嘆かないけれど流石に疲れているのだろう。把握している仕事量は彼よりも多い。――小さく息を吐けば、立ち上がってそれぞれの顔を見渡し、)
飲み物買ってきますけど、何がいいですか?ほら、お前らも。
(寝ている後輩は無視して、何か暖かいものでも差し入れるつもりで、問えば「はいはい!田村先輩の奢りですかー?」とランナーズハイの如く勢い付きの調子に乗った質問が返ってきて、呆れたように頷くのだけれど――先輩の対応を待って、会議室を抜けるつもりで「どうします?」と改めて問い掛けた)