Present for 小野原夏帆
(―届けられるプレゼントは、包装らしい包装も無く、メッセージカードすら添えられていない。ころりと転がるのは牛柄の包みのチロルチョコ一つだけという、余りにも簡素なもの。何か変わった所が在るとすれば、上面に細い黒の油性マジックで書かれた、八の字を逆さにしたような目が、舌を出しているイラスト付きという所。先日のキャラメルのお礼―お返しだろう其れに、送り主が誰か、彼女が気付くかも分からない侭に―)
…なんだかこの、素直じゃない顔には見覚えがあるんだけどなぁ。//小野原夏帆
(自分宛に届けられたプレゼントのうちの一つ、ころりと手の平の上で転がるチロルチョコレート。―チロルチョコは大好きだし、貰えるプレゼントは何でもうれしい。のだけれど、やはり、受け取った瞬間にはぱちぱちと目を瞬かせてしまった。賑やかな少女たちが立ち去るのを笑顔で見送った後もやはり、そのチロルを手に首を捻るのは止められず。)……ううーん…。(届けてくれた少女たち曰く、これだけがプレゼントだという。自分宛なのは、間違いないと言う。落書きの表情をじいっと見つめていれば何となく思い出す顔も居るのだけれど―、)……ま、いっか!(嬉しいから、それでいい。そんな単純な結論を導き出せば、ころんともう一度だけチロルチョコを手の中で転がした―)