Present for 立花仙蔵
（ブルーの水玉模様の袋の中には、色とりどりのクッキーが量入っている。花の形からハートの形から猫の形―と、多種多様な形のクッキーは、更に一つ一つが違うアイシングデコレーションが施されており、更に見た目の派手具合を演出している。猫が小憎たらしい表情をしていたりハートが水玉模様だったりと言ったバタークッキーは、しかし食べてみると案外素朴な味だろうか。そんな包み紙の口を括るのはメッセージカードの紐を兼ねているリボンで、揃い模様のメッセージカードを開けば、小さな文字が並び―、）
クッキーは好きだったかな？？
あのね、何あげようっかなあって悩んでたんだけど、チョコレートは沢山もらうんじゃないか？って言われたので、もしそーだったら、あんましチョコレートばっかりだと駄目かなあって、趣向を変えてクッキーにしてみたの！
弟にも手伝ってもらったし、味見でもちゃんと美味しかったから、きっと大丈夫！…だとおもう！あ、でも、甘いのあんまし控えられなかったんだけど、大丈夫かな…？ちょっと不安だけど、大丈夫だといいなあ…。
バレンタインデーにしあわせのおすそわけ！
立花仙蔵くんへ 小野原夏帆より。
（―しかし、一つ二つ摘まめば気付くだろう、袋の内側に更に詰められた小さな袋の存在。なぜか別途業務用の無地透明の袋に詰められており、明らかに“プレゼント”として渡すには違和感を醸し出すそれ―その中身は、綺麗な包装紙に包まれていた、厳選された整った美味しそうなクッキーと比べると見劣りする、動物の目の位置が微妙だったりハート型が何故か谷間が２つあったりと作り手の不器用さの窺えるクッキーが、数枚放り込まれている。明らかにプレゼント用とは別にされたその透明袋の中身。…隣に並べれば、一体どちらが弟作でどちらが小野原作なのか一目瞭然かもしれない。なぜそれが紛れ込んだのかは、弟だけが知っている侭に。）
クッキーは好きだったかな？？
あのね、何あげようっかなあって悩んでたんだけど、チョコレートは沢山もらうんじゃないか？って言われたので、もしそーだったら、あんましチョコレートばっかりだと駄目かなあって、趣向を変えてクッキーにしてみたの！
弟にも手伝ってもらったし、味見でもちゃんと美味しかったから、きっと大丈夫！…だとおもう！あ、でも、甘いのあんまし控えられなかったんだけど、大丈夫かな…？ちょっと不安だけど、大丈夫だといいなあ…。
バレンタインデーにしあわせのおすそわけ！
立花仙蔵くんへ 小野原夏帆より。
（―しかし、一つ二つ摘まめば気付くだろう、袋の内側に更に詰められた小さな袋の存在。なぜか別途業務用の無地透明の袋に詰められており、明らかに“プレゼント”として渡すには違和感を醸し出すそれ―その中身は、綺麗な包装紙に包まれていた、厳選された整った美味しそうなクッキーと比べると見劣りする、動物の目の位置が微妙だったりハート型が何故か谷間が２つあったりと作り手の不器用さの窺えるクッキーが、数枚放り込まれている。明らかにプレゼント用とは別にされたその透明袋の中身。…隣に並べれば、一体どちらが弟作でどちらが小野原作なのか一目瞭然かもしれない。なぜそれが紛れ込んだのかは、弟だけが知っている侭に。）
普段から食べるくらいだから、甘いのは好きだよ。―ありがとう。//立花仙蔵
（―手渡されたその贈り物に真っ先に目が行ったのは、リボンに括りつけられたメッセージカードだ。ちいさく並んでいる文字を追ってゆけば、自然と双眸には優しい色が灯って、唇が綺麗に弧をえがく。誰の助言かは知らないけれど彼女なりに気遣ってくれたようで、例の料理上手の弟と共に作ったそのクッキーとやらを拝見すべく袋を開けば、今度こそ吐息が笑みの気配を帯びてこぼれ落ちるのだ。彼女らしい、見ているだけでも楽しいユニークなそれをひとつ摘まんで、…美味しい、と意外に思うのは失礼であろうか。そうして落とした視線が隠すように詰められていた透明の袋に気付くのは直後、取り出したいびつさの目立つ菓子と先程食したものとを見比べて―出来の違いと紛れ込んでいた袋の理由になんとなしに見当がつけば、丁寧に無地透明の袋口を開け、なにを思ったか谷間がふたつあるハートらしき形を さくり、咀嚼して、――及第点。とは言え普段から様々なブランドの菓子を食べているだけあって肥えた舌だから、慣れない料理の腕でこれだけ出来れば充分だと思うし、―本命か義理かは知らぬがその好意が有難いものだと、年に一度のイベントくらいは素直に受け止めることにして。）……お裾分け、されておくよ。（二人の名が並んだ筆跡を指先でなぞりながら、小さく呟いた声が、口の中のほのかな甘みと溶けゆく。器用に包み紙をリボンで縛り直したなら、紙袋に入れた他の貰い物とは別に、それだけ鞄の中へと仕舞い込んだのが友人に漁られて取られては困るから なんて理由か否かは、果たして、）