Present for 学級委員長委員会のみんな
(フタ身式の丸い箱は底が深め。ベージュの箱にクレヨンで描いたようなチープな花がひょろりと咲いたデザインのもので、蓋の側面だけブラウンが引き締めて見えただろうか。結ばれた赤のオーガンジーリボンを解けば、中には透明の小さな包みに一枚ずつ詰められた、ハート型の搾り出しクッキーと、おみくじ入りのフォーチューンクッキーが大量に姿を覗かせているだろう。小さな包みの口を雪の結晶のワイヤータイで結んでいるところからも、作り手の凝り性さが滲み出ているかもしれない。どちらも歪さがデザインでもあるクッキーだけに、それだけで不器用さを判断出来る物ではなかったけど、味の方は問題はないだろうか。マーブルのフォーチューンクッキーの中のおみくじは、「がんばろう!」「だいすき!」「あたり!」などなど、脈絡なく数種類のメッセージが飛び出してくる仕様で。箱を結ばれたリボン隙間、差し入れられたメッセージカードには、水色の文字が、躍る―)
学級委員長委員会のみんなへ!
ハッピーバレンタイン!
いつもおつかれさま!いつも頑張ってるみんなのごほうび…にはならないかもしれないけど、喜んでもらえたらうれしいな!
今日はみんなで一緒に食べようね!
わかば。
今更だが意外とマメだな、若葉は。ご褒美、ご馳走様。//鉢屋三郎
(学園長室に届けられたのは少し大きめの箱。真っ先に水色の文字が目に飛び込んで、ちらりと映した後輩の姿は得意げなのか、不安げなのか―。送り主の後輩も含めて後輩達をソファに座らせて、「何ですか?」、中身を問う後輩の声を待たずに蓋を開けてみれば、この人数を考えて多めに詰められたのだろうクッキーが、一つ一つ丁寧に並んでいた)…こういう処は、若葉も“女の子”だな。(小さく漏らした声には、何年かすれば鉢屋が驚く程の良い女になると豪語した彼女から不満が飛んでくるかもしれないけれど。後輩が淹れたお茶と共に、皆でわいわいとクッキーを囲めば、其れだけで日常の様で、特別な放課後に変化していただろうか。歪んだマーブルのクッキーを齧ってみて、中に紙が差し入れられている事に気付けば、ちょちょいと摘み上げて)―あたり。…なぁ若葉、当たったからには何か有るんだろうな?(バレンタインにそんな贈り物を貰って居乍堂々とそんな事を宣って、後輩達に呆れた視線を送られても物ともせずだ。賑やかな輪を作って過ごす放課後は、本日も中々に有意義であった――)