性格・備考
母子家庭で仕事に出ている母の代わりに三人の弟の面倒を見てきた芳川は、その環境が作ったのか元来の性格なのか、随分所帯じみた世話焼きな気質である。あっちへちょろちょろ、こっちへちょろちょろ、動くことを苦にせず家で家事に勤しむ彼女の脳内は常にスーパーの格安情報や節約術など色気のない知識が詰まっている。小学生の弟二人に幼稚園生の弟一人を日頃相手にしているものだから「めっ!」なんて子供を諭す口癖が友人の前でつるりと出て来たりして、その度に顔を赤くして謝る姿も度々見受けられるよう。感受性が強くすぐに感情が表に出る馬鹿正直さ―そこは多少なりとも弟達に感化されているのかもしれない―、そして日本人にありがちな頼まれたらNOと言えないその性質により中々に貧乏籤を引きやすいのだが、前述の通り働くのを苦にしないのでその自覚がないのは或る意味お目出度いのではないだろうか。ただ、料理や裁縫など家事全般も始めから手際よくこなしていた訳ではなく長年の積み重ねで上達した腕前であり、何事に関してもスロースターターで結果が出るまでに時間が掛かる。―つまりは要領がそこまで良いとは言えない、典型的な努力型。一度着手した事は納得出来るまで放り出さず、やがて遅蒔きながら水面下の努力が実を結ぶ形態は、芳川という人間の在り様をよく表していよう。唯一の特技である家事を除いて平均水準ラインギリギリの彼女は、それでも毎日を謳歌していて笑顔が絶えないのだ。
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